質的データ分析のワークショップに参加して
暑さ厳しき折、いかがお過ごしでしょうか。
先日質的データ分析のワークショップに参加させていただきました。
日頃の実務では、各案件の特性に応じて個別に調査計画を立てることが多いため、質的研究の汎用的なプロセスをあらためて確認しておきたいと考えていたところでした。
質的データ分析に最初に接したのは、修士論文で事例研究に取り組んだ際のことです。
当時は、Miles & Huberman(1994)による質的データ分析の手法を用いて、インタビュー調査の結果を体系的に整理しました(Qualitative Data Analysis: An Expanded Sourcebook, 2nd ed.)。
ご参考までに、分析のプロセスは、以下の流れで構成されています。
1. データの収集
2. データの表示
3. データの圧縮
4. データの集計
5. データの可視化
ここでは、各段階の詳細な定義に触れることはしませんが、他の著者の解説書も参考にすると、各プロセスの呼び方は異なるものの同じ流れを踏んでいることに気が付きます。今回のワークショップでは、大学の先生方に体系的なプロセスをご教授いただき、自分の中での理解がより明確になりました。
ワークショップでは、大量の質的データにも耐性のある分析手法も確認することができ、まとまった量のテキストデータを扱う日頃の実務に活かせる幅が広がりました。
ワークショップの後半では、「質的データ分析は、定量的手法と比べて一般化が難しい」という話題もあがりました。質的手法・量的手法がトレードオフのものとして捉えられることが多いと感じますが、分析対象とするテキストデータのボリュームが多い場合、集計するデータ(上記 4.データの集計)も蓄積されるため、量的な解析も可能になります。
例えば昨年度の業務では、ある地域における5か所程の施設A~施設Eに関する記事情報を収集し、質的データ分析のプロセスを踏んで変数1~変数8を抽出いたしました。データを集計した結果、各施設に共通する変数が浮かび上がると同時に、施設ごとに特徴があることも可視化されました。後日、現地調査でそれぞれの施設を訪問した際、事前の分析結果が現地の実態と重なり、分析の有効性を感じることができました。
質的データ分析に対して「一般化しにくい」との見方は一理あるものの、データの蓄積次第で、多くの示唆を得ることができます。
今回のワークショップでそのような経験を共有したところ、アカデミックの方々から意外にも興味を持っていただける場面もあり、自分なりに貢献できたことを嬉しく思っています。
今後もこうした学びを糧に、日々の実務に活かしてまいります。